今では貴重な素材となった紅の製造工程や歴史・文化について話をきき、また、浮世絵の鑑賞を通して、紅がどう使われ表現されたかを学びます。次に、実際に、原料の紅花を観察しスケッチした後で、浮世絵に使われていたものと同じ楮100%の和紙に、墨や紅、紅花の花弁から抽出した黄水を使って、紅花を描き、作品を制作します。
 紅や紅花という本物の素材に触れ、日本の「紅の文化」を様々な角度から学ぶ体験を通して、失われつつある伝統文化や伝統的な素材への理解を深め、関心を高めること、また、制作することで、伝統的な素材を体感し、その価値を生かして創造する喜びや意義を知ることを目指します。

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主催者NPO法人感性の教室

「紅」 小学校
高学年以上

(べに)の授業 ―紅と紅の文化を学び、紅花を描いてみよう―

(べに)の授業― 紅花からつくられる「紅」 その豊かな伝統文化を体感する学び

★触れる機会の少ない紅や紅花を観察し、紅を使い紅花を描く貴重な体験です。

所要時間全95分
内訳:2単位時間+5分(1単位時間/45分 )
※5分の休み時間を組み込んで実施

実施対象小学5年生 1クラスずつ実施 ※小学校高学年以上対象

つくりかた

1

紅って何だろう?

写真を見ながら、紅の歴史、染色や化粧など紅を使った文化についてお話をきく。

「紅花の赤って、1%だけなんだ。びっくりしたぁ。」

2

紅がつくられる
工程を知ろうー

紅花農家が紅花を栽培し紅餅を作る工程や、それを紅職人が紅にするまでのお話をきく。

「紅って、すごく特別なものなんだな」

3

笹紅を見てみよう

講師が実際に唇に紅をさす実演を見る。塗り重ねて玉虫色に輝くことに気づく。

「紅さしをやってみたい」「むっちゃ、つやつやしてる!」

お話をきいて、わかったことや、大切だと思うことをワークシートに、書きましょう。

1~3.うながしの言葉

4

紅に触れてみよう1
乱花の観察

紅花の花弁を乾燥した乱花を触り、匂いを嗅いで、観察する。

「カブト虫の匂い」
「くさい」
「サラサラ」
「紅茶みたい」

5

紅に触れてみよう2
紅餅の観察

紅花の花弁から黄色色素を抜いて発酵・乾燥した紅餅を触り、匂いを嗅いで、観察する。

「ツンとする匂い」
「思ったより固いね」

6

紅に触れてみよう3
小町紅を見る

紅を猪口に塗り重ねてつくる口紅、玉虫色の「小町紅」を見る。

「言葉にできないほどきれい」
「カナブンの背中みたい」

4.そっと触ると、感触がよくわかります。
 
5.乱花の匂いと、どう違うかな?

6.小町紅の色は、どんな色に、似ている?

4〜6.うながしの言葉

7

浮世絵の鑑賞と解説

浮世絵を鑑賞しながら、その歴史や、紅が絵の具として、どのように使われたかについて学ぶ。
浮世絵の落款についてもお話をきく。

8

紅花のスケッチと、観察

紅花を一人一本ずつスケッチする。匂いを嗅ぎ、触って感じたことを言葉で書く。

「トゲトゲしてる」
「花はふわふわ」

9

紅花を描く準備

・各自が書道用具の下敷き、文鎮、筆、スポイト、墨汁を準備する。
・各テーブルごとに筆洗と雑巾を用意する。

スケッチは上手下手を気にせず、じっくりと見て描くことが大切です。
紅花に触る時には棘に注意しましょう。

8.うながしの言葉

10

濃い墨と薄い墨をつくる

薄い墨:水に、筆で墨汁をほんの少し、加える。

濃い墨:墨汁に、筆で少し水を加える。

和紙に試し描きをしながら調整する。

11

紅花を和紙に描く

・紅花を見ながら、濃い墨を筆につけて輪郭を描く。
・薄い墨で、葉や茎を塗る。

「棘があるのは、花を守るためかな」

12

紅花の花を塗る

花弁に、乱花を水に浸して抽出した黄水を塗り、薄めた紅を重ねる。

「色がきれいで、うまく描けた」

10.薄い墨は、筆先を使い慎重に濃さを調整しましょう。

11.心を整え、静かな気持ちで、筆をとります。

12.花をよく見て、花の濃い色のところに、薄めた紅を重ねましょう。

10〜12.うながしの言葉

13

紅で落款をかく

名前の一文字をデザインし、紅で落款をかく。作品のどこにかけば引き立つか考える。
「僕のやつ(作品)が最高!」

14

完成

最後に、紅のような伝統的な素材や文化を残していくことの大切さについて、お話をきく。

15

台紙に貼り、校内に展示、鑑賞する。

本物の貴重な紅で落款をかきます。
どこに落款をかくと、一番かっこいいかな?

13.うながしの言葉

レシピ

(べに)の授業 ―紅と紅の文化を学び、紅花を描いてみよう―

実施者の準備

⼩町紅
紅餅
紅花 児童数+予備
乱花(染色用等)
薄めた紅液
⻩⽔
和紙(31×18cm程度/手漉き和紙が理想) 児童数+予備
作品台紙:八つ切り色画用紙(灰色等) 児童数+予備
書道用⼩筆 児童数×2本(⻩⽔薄紅用と落款用)
ワークシート 児童数×2種(記録用と観察用)
紅や浮世絵の説明用資料(スライド、浮世絵等)

各児童の準備

パレット
筆洗
書道用具(墨汁、筆1本、下敷き、文鎮、スポイト)
雑巾 1枚

開催を可能にする条件・設備

●実施時期

本プログラムは紅花の生花を使用するため、開花時期の7月上旬〜中旬に実施する。

●実施場所

筆を洗ったり水を汲んだりできる水道やシンクが近くにある教室やスペース。

●講師・ファシリテーター

  • 紅や紅文化の解説、浮世絵の解説を行なう講師
  • 観察や絵を描く時の支援と進行を担うファシリテーター

●機材等

説明資料を見せるための機材(PC、プロジェクター、書画カメラ、スクリーン、DVDプレーヤー等、各場所や条件に適したものを選択して使用する。)

成功させるコツ、ポイント

  • 紅や紅花が、生産農家や職人の手でつくられる貴重な素材であることを伝え、プロセスごとに、
    素材と真摯に丁寧に向き合うよう言葉掛けを行なう。
  • 本プログラムは授業を基本としているため、限られた時間内での実施で鑑賞は校内での展示後になるが、WSの場合は、所要時間を2時間として、完成後それぞれの作品を鑑賞し感想を述べ合うと、
    より体験が深まる。

ワークショップの生い立ち

CoJの催しで、伊勢半本店 紅ミュージアムと、NPO法人感性の教室が出会い、「子どもたちに日本の豊かな紅文化を伝えたい」という共通の志でプグラムを開発しました。 紅や紅花とともに、最後の紅屋である伊勢半本店と、貴重な紅花を守り続ける生産者の思いも届ける授業です。

感想

・紅も伝統文化なんだと思いました。短い時間だったけど、慎重にやったので特にそう感じました。
・紅の花は、黄色の色素が99%で、赤は1%しかないのに、びっくりしました。
・紅を薄めたピンク色もきれいだったけど、紅はキラキラ玉虫色に輝いていた。
児童
・紅で二色の色がつくれることに気づいて嬉しかった。
・紅花はほとんどが黄色だったので、黄色の色素を何に使うか知りたい。
・紅はすごく特別なものなのに、触ったり匂いをかいだりして、すごいと思いました。
児童
・紅の赤はどれだけ貴重かがよくわかったので、お母さんに教えてあげたいと思いました。
・紅花を描くのは難しかったけど、楽しかった。
児童
貴重な紅や紅花、手漉き和紙など、本物に触れる体験の素晴しさに接し、「本物に出会う大切さ」を感じました。
先生
子どもたちは、授業に意欲的に取り組み、限られた時間の中で、様々なことを学び、表現することができました。
先生
子どもたちは、授業を通して多くの気づきや驚きを体験し、紅や和紙等、伝統的な素材への興味を深めたようです。
人の手で作られた貴重な素材と向き合う子どもたちの真剣な眼差しと、完成後の満足感溢れる笑顔が印象に残ります。
完成した作品はそれぞれ味わいのある素敵な作品ばかりでした。
授業実施者

主催者情報

(べに)の授業 ―紅と紅の文化を学び、紅花を描いてみよう―

(べに)の授業― 紅花からつくられる「紅」 その豊かな伝統文化を体感する学び

★触れる機会の少ない紅や紅花を観察し、紅を使い紅花を描く貴重な体験です。

メソッドコンテンツ開発者NPO法人感性の教室
講師伊勢半本店 紅ミュージアム
NPO法人感性の教室
イベント名(べに)の授業 ―紅と紅の文化を学び、紅花を描いてみよう―
会場東京都中野区⽴緑野⼩学校
実施主体#東京都中野区⽴緑野⼩学校・NPO法人感性の教室
実施協力団体伊勢半本店紅ミュージアム/株式会社伊勢半本店(講師・材料提供・授業準備協⼒)
実施日2018年7月9日
ワークショップ参加人数1回目:37人 2回目:36人
運営人数教員2名・講師3名・サポート7名
基本運営人数(最低人数)教員1名・講師2名・サポート5名
所要時間全95分
内訳:2単位時間+5分(1単位時間/45分 )
※5分の休み時間を組み込んで実施
実施対象小学5年生 1クラスずつ実施 ※小学校高学年以上対象
本ワークショップに関するお問い合わせ先機関名 NPO法人感性の教室
担当者 加藤 潤子
https://www.kanseinokyoshitsu.org/cooperation_requests/
FAX: 048-257-5575
伝えたいこと#伝統と歴史を教えたい #感性を育てたい
ジャンル#墨 #和紙 #紅
対象年齢#小学校高学年・10歳以上
所要時間#半日・100分以内
キーワード#和紙 #墨 #浮世絵 #紅花 #紅