絶滅危惧の素材と道具プロジェクトとは?

絶滅危惧の素材と道具プロジェクトとは?

近い将来に枯渇が懸念される、工芸に使う素材や道具。いま日本全国で連携して取り組むべきことや将来を拓く実際の手だてを考え、既に活動されている方の活動を広め促進するプロジェクトです。

絶滅危惧の素材と道具プロジェクトの趣旨、目的

素材と道具の危機に対し、現代社会に無理のない形で解決策をさぐることを目的としています。
ストック・リサイクルなど新たな視点を採り入れながら、取り組むプロジェクトです。
今までひとりひとりでは解決できなかったことに、横断的に連携することで突破口をひらいてゆきます。

今までの活動

2015年度京都で開催した「21世紀鷹峯フォーラム」を機に、研究会を発足。100年先に向け永続的に無理のないエコシステムをどう構築するか、情報の流れをどのようにするかを議論し、3つの活動方針を定めました。

・廃業される方の貴重な道具や素材を活用する方法を模索する
・無駄なもの、余っているものを活かしながら複刻・復元していく
・よいものに触れる教育を広める(よい道具や素材は、比べてみる機会があれば選ばれる)
上記の成果発表を、京都造形芸術大学と共催でシンポジウムを開催し、意見交換の場をつくりました。

2016年度東京で開催した「21世紀鷹峯フォーラム」では、前年京都での議論をベースに21世紀鷹峯フォーラムのさまざまな事業につなげ、以下の事業を実施しました。

「NEXT100年」開催。現在よき取り組みを行っている方々、画期的で注目すべき活動を行われている方、本物を追求する方たちに光を当てるべく、各々の活動の発信を共同で行うものです。そこでは、それぞれの方同志の情報交換やマッチング、共同発注や流通拡大が可能になる場をつくっていくモデルでもありました。

・「イエローリスト」づくり。「実際の手立て」をはじめるために、「文化財保護」「美術工芸品の制作環境維持」「伝統産業基盤を支える体制づくり」「伝統建築、伝統芸能を支えるわざやものの維持」のすべてにわたり、一元的な情報の集約がこの世界の人たちに求められているものだと考えました。課題を抱える方々や有識者にご協力いただき、「10年先に枯渇が懸念される素材と道具は何か」をまとめたイエローリストづくりに着手しました。

・イエローリスト・トリアージュ会議。2017年度に集まったイエローリストを軸に、「異なるジャンルをまたぎ共通課題をもつもの」を導き、「対応策の仮説を立案」、「世間が驚くべき事実の抽出」を行う、イエローリスト・トリアージュ会議を東京・京都2会場をつなぎ、ビデオ会議形式で開催しました。

今までのシンポジウムはこちらから

 

推進グループ長よりのメッセージ

時代は常に変わってゆきますので、無くなっていくものに目を馳せることが目的ではありません。つくり手自らがつくれる範囲のことに何か手を打つ必要は全く感じません。社会全体が参画して、次世代につなぐべきものを、無理なくつなぐことのできる、小さなエコシステムをいまのうちに残しておきたいと考えています。
研究者の皆様、課題に直面する方々とともにある事業推進グループとして、一般の方々の視線を力にして進めていきたいと考えております。以下は一般の方へ向けてのメッセージです。

「最後の職人」というニュースに、たびたび触れます。私たちが、何かすべきことがあるとしたら、どこかであまっているものをつなぐ、作家さんが諦めてしまっても、使い手がもっといいものが見たい!と訴える。そういうことであると思っています。
調べていけばいくほど、いま電話一本で手に入るものが、このあと一斉になくなると思います。一度なくなってしまったものを復刻するには膨大なエネルギーがかかります。
記録や情報システム構築、一般の方々の参画できる機会や場を増やすこと、よい活動をされている方々をつなぐこと、廃業される方の道具や素材を託せる施設をつくる案づくりにぜひご参画ください。
絶滅危惧の素材と道具プロジェクト推進グループ長・岩関禎子