講演会参加者や、記録動画をご覧になられたかたで、質問や、ご意見、ご感想など、こちらにご記入下さい。内容によっては登壇者から返信いただけるかもしれません。
登壇者の皆様
興味深い、講演をありがとうございました。
これまで考えていたこと、講演を拝聴してから考えたことを書かせていただきます。
(1)毛皮の調達に関して
先日の講演でも牧場にクマネズミは現れるとの発言があったかに思いますが、こちらの坂本ら(2019)の研究でも、牧場に現れるネズミはクマネズミが主で、特に春先に(倉庫への)出現頻度が上がるようです。全国に牧場はあるので、牧場主に依頼して、飼料小屋を中心にトラップを春先に仕掛けて、集める手はあるかもしれません。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jwaras/62/2/62_99/_pdf
水毛の主はクマネズミという話で進んでいましたが、矢部さん(1940年生まれ)というネズミの研究者によれば、ドブネズミの可能性もあるようです。実際のところ、本根朱からDNA鑑定などして確かめることはしたのでしょうか。
http://ujsnh.org/activity/essay/wajima.html
水毛の質や傷み具合が種およびその生活環境によって異なる可能性はありますが、ドブネズミもクマネズミもratts(クマネズミ属)ですし、もしドブネズミの大型個体の水毛で作れたら、捕獲は少し大変になるかもしれませんが、頭数は少なくて済む可能性はあります。
(2)本根朱筆と蒔絵筆制作に関して
まず最初に、蒔絵をやっている学生、作家のうち、どれくらいの方が本根朱(クマネズミの水毛の筆)を使ったこと、触ったことがあるのでしょうか。
本根朱が良いと伝聞していても、実際に使って実感したことが無ければ、わざわざ高い本根朱を買う動機は無いと思います。
「子どもに本物(の工芸品)を触れさせよう」という取り組みは聞きますが、漆芸作家の卵にこそ、同様の機会を与えるべきではないでしょうか。
とすれば、学校の施設利用料として集めたお金で学校の教材として本根朱を毎年一定数発注すれば、蒔絵筆職人は安定的な仕事が得られるし、毎年一定数毛皮が必要になるので、ネズミの捕獲をお小遣い稼ぎに行う人も出てきたり、団体で年に数回年中行事的に(牛飼育環境への衛生面で微妙かもしれませんが)牧場周辺で農学部などと連携してネズミ捕獲を行うとか、広げていけるのではないでしょうか。
漆芸作家を目指していた学生も、そうやって筆に触れる機会が増えれば、蒔絵筆職人を職として選ぶ人も出てくる可能性もゼロではないかもしれません。また、石川県立輪島漆芸技術研修所に道具制作の過程を設けるのも漆用の筆を制作する職人を育てるための方法ではないでしょうか。
そして、職業としての蒔絵筆・漆刷毛職人ですが、剣菱酒造の取り組みが参考になるかと思います。
剣菱酒造は木製暖気樽の職人が最後の一人になったとき、社員として雇い入れ、自社の社員3名を職人に弟子入りさせて、木製道具作りを自社で行うようになり、他の会社からの注文にも対応しているそうです。
同様に能作を筆頭に、漆に関わる会社が自社で職人を育て、外注を受けるのも一つの方法かと思います。
https://sakestreet.com/ja/media/sakagura-kenbishi-shuzo-hyogo-2
一般人ですが、お手伝いできることがあれば…。
以上、長々と失礼いたしました。 平石博敏@浜松医科大学
早々に貴重な情報の数々、ありがとうございました!
登壇者のみなさまには共有させていただきました。お答えできそうなかたに聞けていませんが、感動致しました!当方で知りうる限りの情報です。
(1)養鶏場で、使う水毛の状態も良さそうなクマネズミの確保はできそうだが、その皮を剥いでくださるかたが確保できず、というところで詰まっておられた鵜島三壽さんというかたが京都におられます。可能な限り調べたのですが、DNA鑑定は関係各位で行われていないように思います。共有いただいた資料から、おっしゃるように、研究用ラットからの利活用の方法もあるかもしれないと思いました。蒔絵筆製作者の村田氏のお考えをうかがえるチャンスがあれば、お聞きしてみたいところです。
(2)知りうる限りでは、ぺんてるさんが開発された、ナイロン筆が、産地では活躍しているようです。今後は、「あるものでなんとか作る」という論理で進んでいくことになりそうですが、おっしゃるように、大人の役割は、こういうものもあるから使って見てどう違うか確かめてみたら?という選択肢を後進に与えることが、今を生きるものに求められていると思いますので、お考えはとても貴重な、真理のひとつだと思います。
また、能作さんの事例もふくめ、LVMHでも、欧州のレース職人の会社を併合し、安定収入を約束して技術を守る動きも、社会の動きとして重要、共有すべき思考だと過去の本事業関連の会合で指摘されました。
わたくしも、一般人で、課題の渦中にある人間ではありません、課題に触れ、共感によって生み出される、現代ならではのあたらしい考え方や場づくりが、何か課題突破できる可能性を秘めているように感じているひとりです。
本事業では、動けば動くほど課題の共有に突き当たり、まだまだ、この業界の「救援力」が不足していることに直面します。
京都府の皆様も含め、早くからこの課題に当たられてきたかたがたは、諦念感も感じておられるかたもいらっしゃいます。
そこは本当に残念なことだと感じております。ほんとうに皆様と共有すべき課題はあるのですが!
まとまっていないので、社会も動けない、という、残念さを早く解消できる体制づくりに寄与したいと思います。